Music Thinking ミュージックシンキングによる人間関係マネジメント
ロジカルシンキング、ラテラルシンキング、クリティカルシンキングに続き、
デザインシンキング、アートシンキングといった様々な思考法が編み出されています。
ビジネスパーソンなら誰もが一度は学んだことがあるのではないでしょうか。
私もこれらのテーマを扱った研修を実施したり、
自らの実務の中で様々な形で活用してきました。
そもそもこれだけの思考法が挙げられるにはどのような理由があったのでしょうか。
答えはシンプルであると考えています。
「行き詰まりを感じるから」です。
思考法の整理
1.ロジカルシンキング
まずは、直感的、感覚的に語っている状態から
ロジカルシンキングを導入することで
誰もが根拠ある考え方をすることで生産性を挙げようとしてきました。
特に、年上を敬うという考え方が根付いている日本では
年功序列制も相まって「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」を
重視してしまう傾向が強くでます。
ロジカルシンキングが共通言語になることで、
「何を言ったか」にフォーカスして
有効な議論を重ねるうえで有効な手段であったといえます。
2.ラテラルシンキング
しかし、常に妥当な思考を積み重ねていくと
似たような答えしか出てこないという欠点がでてきました。
そこで既成概念を取り払い、発想の幅を広げようとしていったのが
ラテラルシンキング(水平思考)でした。
3.デザインシンキング
ラテラルシンキングが発想の幅を広げることに注力しているのに対して、
デザインシンキングではユーザーを起点に、
ユーザーへの貢献を目指す思考法として浸透しています。
4.アートシンキング
アートシンキングはユーザーではなく個々人の執着するものを解き明かし、
発想のタネを創り出すものです。
様々な制約の中で生きているビジネスパーソンがアーティストの思考法を形式化し
自由な発想をするための手段として活用しようとするものです。
イノベーションや新規事業創出が必要とされるなかで、
リーンスタートアップ等手法論は確立されていっているにもかかわらず、
事業のタネとなる思いの部分が不足がちなのが実態です。
そうしたなかで、「本当はやりたかったこと」を再発見させるためのツールとして
アートシンキングは注目されているのです。
思考法は一つに絞らない
これらの思考法は一つだけを使う、ということはなく、複数の思考法を組み合わせて
活用していきます。私は下記の通りに整理しています。
重要なことは常に目的を意識することです。
あくまでもこれらはツールなので、常に使わなければならない というものではありません。
ミュージックシンキングとは?
ミュージックシンキングはこうした背景を踏まえながら
音楽の特に「演奏活動」における思考の働きをビジネスの中で活用しようとするものです。
人間関係の中で自らが周囲のステークホルダーとどのように関わり、狙いを達成していくかを考えていきます。
ミュージックシンキングのポイントは3つが挙げられます。
1.ステークホルダーとの双発性
ビジネスパーソンは様々な利害関係者と共に仕事をしています。
音楽家の演奏活動は「音楽」という止めることのできない演奏活動の中で
様々なステークホルダーに言葉以外の方法で影響を与え合いながら演奏を作っています。
演奏者は指揮者や共演者との協調をしながら、時に裏方の支援を受けつつ、
聴衆に感動的な演奏を提供します。
クラシック音楽の演奏者(ソリスト)を中心とした影響関係
演奏者は聴衆の反応を見ながら、自らの演奏の質をコントロールしています。
聴衆の反応が演奏に影響を与え、演奏者はさらに表現を高め、また聴衆を巻き込んでいく・・・
連続的なコミュニケーションが演奏という独特の興奮を作っていくのです。
ビジネスパーソンも同様に周囲に影響を与えあって生きているはずです。
当たり前のことのようですが、あなたの行動が周囲に影響を与え、
周囲の人の行動があなたに影響を与えています。
ビジネスパーソンの双発的状況
ビジネス社会ではどちらか一方の状況であるように感じてしまっている場合のほうが
はるかに多いのではないでしょうか。
周囲が自分に影響を与えているという発想に陥る
自分が中心でどのように影響を与えているかばかりが気になる人もいる・・・
大切なのはどちらか一方が影響を与えていると考えるのではなく、
双方向性で常に影響を与え合い、自分のいる環境が作られていると考えることです。
ミュージックシンキングでは双発性をテーマにステークホルダーを書き出し双方向性を見出していきます。
2.時間軸を含めて分析する
音楽家の演奏は静止状態では取られることができません。
常に音楽とは時間の流れがあって成立しているものです。
ミュージック・シンキングでは常に時間の流れを意識して考えていきます。
日々の出来事に一喜一憂するのではなく、物事の流れに意識を向けていきます。
具体的な手法を下記で挙げてみます。
1.スコーピング(範囲の設定)
ミュージックシンキングでは思考の対象となる範囲を設定します。
際限なく領域を広げてしまうと扱いきれずに思考が浅くなってしまいます。
あらかじめ思考の対象となる期間を決めおきます。
新組織となった4月から上期中の6か月・・・など
範囲を決めていきます。
このときに長くても1年くらいの範囲に絞っておくことが重要です。
2. 1週間レベルでの自分のアクションと周囲のアクションの違いを観察する
自分が周囲に対してどのような影響を与えうる行為をしたのかと、
周囲の行動で新しい行動や発言があったかどうかを記載していきます。
週ごとにフレームに変化を埋めていきます。
3. 全体を通じて分析する
記載が終わったら、全体の流れを見ていきます。
そうするとどの部分で人の行動が変わったかが見えてくるでしょう。
3.自己を表出する
演奏活動の一つの要素として「表現」することが挙げられますが、
その中に、自分の考えや思いを表に表すこと、表出している側面があるといえます。
この表出をステークホルダーとの関りの中に還元していきます。
本来、自分の本来の思いを無視ししていても、人間関係を構築することは可能です。
ただしミュージックシンキングでは下記の観点から、自己表出を強めることを志向しています。
①人間関係を自分にとって苦痛なものにしない
②偽りのない姿が周囲の信用を獲得する
③自らを周囲に認めさせることを通して自己肯定感を獲得する
ミュージックシンキングは日常の中でも生かされる
ミュージックシンキングは人間関係を下記の観点から豊かにしていくものです。
①人間関係は常に双方向で考える
②時間の流れを常に意識して考える
③自己を表出する
あたかもセッションのように周囲を上手く巻き込み、
あなたが目指す世界により確実に近づくための有効なツールになりえるものです。
ビジネスパーソンを想定して考案したフレームですが、
地域社会や家族でも有効な視点となるでしょう。
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